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「ちょっと待って。今日、ここに来てくれたってことは、遠藤さんは俺を選んでくれたんだよね?」
いきなりそう言われると、ちょっと恥ずかしい。
「うん。一緒にデートしたり、付き合うのは吉岡君だと思った」
「でも、仕事のパートナーとしては狭間先輩を選んだと。俺は、その選択肢には入らないの?」
ごめんね。でも吉岡君じゃ、やっぱり難しいと思うから。
「吉岡君には、五条インダストリーでどんどん出世してもらわないと。もし英里紗の会社がうまく行かなくて潰れちゃったら、吉岡君に養ってもらおうかな〜」
「え、え、それって。え、そういう意味?」
「うーん。どうだろ」
言っておきながら、顔が熱くなってきた。ちょっとフライング発言だったかな。
吉岡君にしてみたら、自分の都合ばっかり考えている虫のいい女だろうけど、論理的に積み上げて考えても、感覚に任せて判断しても、同じ結論しか出なかったから。吉岡君とはプライベートをしっかり楽しめるし、イケコンとは、しっかり仕事をする。
それが私にとっての最善な選択のはず。
「あー、なんか騙された気分」
「ねえ。クリスマスイブなんだし、そろそろラン行こうよ」
「え。本当に、これから走るの?」
こちらを見上げる目が、ちょっと意外そう。
「だって、そのために、ここを選んだんでしょ?」
「場所のインパクトでここにしたけど、本気で走るとは思ってなかった」
「えー。ラン行こうよ」
「わかった」
立ち上がった吉岡君は、右腕をヒジから曲げて、左腕で引っ張りながら腰をひねり、ストレッチを始めた。
「なんか釈然としないから、飛ばして行くぞ」
「今日は、歩行者も多そうだから、スピード出すと危ないよ」
苦笑いしている。
「わかったよ。でも、走り終わったら素敵なディナーも予約してあるから、ゆっくりもしていられないし」
さすが。そこは期待してる。
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