35 一年後

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35 一年後

「以前は、アメリカ各州の取り組みは、必ずしも進んでいるとは言い難いものでしたが、二〇三〇年というゴールが近づいてきた今、急速に十七の持続可能な開発目標達成に向けて、法規制の動きが進み始めています。本日ご紹介したように、御社(おんしゃ)のビジネスにおいても、すぐに対応を検討し始めないと間に合わなくなる懸念があります。ぜひ、一緒に検討させていただけませんでしょうか」  プロジェクターで壁に投影したプレゼン資料の前で、一通りの説明を終えると、会議に出席している相手会社の役員の顔を一人ひとり確認する。皆、手元の印刷資料を見直しながら、考えこんでいる様子。 「一旦、御社内で検討いただいて、後日、結果を連絡いただくことにいたしますか?」  今まで主にやり取りしてきた、海外事業準備室の室長さんに向けて声をかけてみると、振り返って他の役員に向けて話し始めた。 「これまで、事前確認させていただいてきた点は、全て盛り込まれていますので、提案としては問題ないと思います。今後、具体的な契約に向けて、EKRコンサルティングさんと手続きを進めて行くということで、承認いただけますでしょうか?」  一番前に座っている社長さんが口を開いた。 「うむ。役員会として承認する。我が社として初の米国進出のために、避けては通れない重要課題だということは、よくわかった」 「ありがとうございます!」  思いっきり頭を下げた。  新規契約、第一号だ!
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