4 ホームグラウンド

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 伝票を補充し終わったら、文房具や備品の管理簿のチェック。うちの会社はコストに厳しいから、消しゴム一個でも、ボールペン一本でも、払い出す時には管理簿に部門コードと名前を書いてもらうことになっている。ずっと見ている人がいるわけじゃないから、ごまかそうと思えば、できないことはないけど、そんなことしても得するわけじゃないし、みんなちゃんと書いてくれている。 「よし、チェック完了。メール確認の前に、コーヒー買ってこようかな」  伝票や備品の棚は、払い出しに来る社員が取りやすいように、オフィスの入口からすぐの所に置いてある。なので、そのまますぐ廊下に出られる。フロアの真ん中には、自動販売機が置いてある休憩コーナーがあって、そこで紙コップのコーヒーが買えるようになっていた。  自動販売機のコーヒーのボタンを押し、プリペイドカードをタッチすると、ウイーンとコーヒーを作る音がし始める。ご丁寧に、豆から挽いて一杯ずつ淹れているらしい。その間に、横にある窓から外を眺めていると、自分の姿が鏡のようにガラスに映っているのに気がついた。
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