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1 丸の内デビュー
「す、すみません! 大事な資料に!」
「大丈夫ですよ。予備は沢山ありますから。それよりスーツ大丈夫でしたか?」
ペットボトルのお茶をひっくり返して、テーブルの上の資料をダメにしてしまった私の横に、さっとティッシュを持って近づいて来たのは、さっきコンサルタントですと自己紹介していた人。確か、狭間涼介と体制図に書いてあった。
手際よく濡れた資料を回収して、机の上を拭いてくれた上に、私の服の方を心配してくれるなんて、うちの工場では見たことがないタイプ。しかもイケメン。
「はい。新しい資料です」
「あ、ありがとうございます」
にこやかな笑顔で渡されると、柄にもなく頬が熱くなってきた。うぶな高校生でもあるまいし、いい社会人の私が、何をぼうっとなっているんだ。
遠藤佳奈 22歳。大手メーカー五条インダストリーの相模原工場総務部勤務。本社勤務の丸の内ビジネスウーマンに憧れて就職したけど、入社後に配属されたのが地方工場だったので、やさぐれ気味。なんか自分で言ってて、嫌になる。
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