5 ランチカフェ

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5 ランチカフェ

「お、おおっ!」  待ち合わせ時間の十分前に、本社ビルの一階に着いたのに、吉岡君はもうロビーに立って待っていた。しかも、エスカレーターで上がってきた私を一目見るなり、この大げさな驚き方。 「な、なに? 変な格好してる?」 「いや、すげえカッコいいし、キレイ」 「ちょっと……」  あんまりストレートにベタ褒めされると、どう反応していいかわからなくなるから、やめて。  でも今日は、ユニット・アンド・ローズで買った、ちょっとおしゃれめなスーツを着て、メイクも、いつもより丁寧にして来たから、先週とはイメージが違うはず。そこを見逃さないのは、吉岡君、ポイント高いよ。 「い、いつもと一緒だよ」 「そうか? ま、それなら、それでいいけど」 「このまま、外に出る?」 「そう。通りを右に行って二つ目のビルの一階」 「どんなお店かな。楽しみ」  自動ドアから外に出ると、びゅうと吹き付ける冷たい風に、思わず震え上がった。地下鉄の改札フロアから直接ビルの中に入って来たので、気温差がすごい。まだ十月で、時間も午後一時だというのに、外は真冬並みだった。
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