127人が本棚に入れています
本棚に追加
5 ランチカフェ
「お、おおっ!」
待ち合わせ時間の十分前に、本社ビルの一階に着いたのに、吉岡君はもうロビーに立って待っていた。しかも、エスカレーターで上がってきた私を一目見るなり、この大げさな驚き方。
「な、なに? 変な格好してる?」
「いや、すげえカッコいいし、キレイ」
「ちょっと……」
あんまりストレートにベタ褒めされると、どう反応していいかわからなくなるから、やめて。
でも今日は、ユニット・アンド・ローズで買った、ちょっとおしゃれめなスーツを着て、メイクも、いつもより丁寧にして来たから、先週とはイメージが違うはず。そこを見逃さないのは、吉岡君、ポイント高いよ。
「い、いつもと一緒だよ」
「そうか? ま、それなら、それでいいけど」
「このまま、外に出る?」
「そう。通りを右に行って二つ目のビルの一階」
「どんなお店かな。楽しみ」
自動ドアから外に出ると、びゅうと吹き付ける冷たい風に、思わず震え上がった。地下鉄の改札フロアから直接ビルの中に入って来たので、気温差がすごい。まだ十月で、時間も午後一時だというのに、外は真冬並みだった。
最初のコメントを投稿しよう!