5 ランチカフェ

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「さっむいね。風も強いし」 「ここは、特にビル風が強いからな」  気合を入れて着てきたスーツは、春秋用に買ったもので、残念ながら冬仕様ではない。コートも着ていないから、かなり厳しい。朝、工場に行く時は、駅からシャトルバスが出ているから、気温なんてあまり気にしていなかった。 「こ、こっち?」 「もう一つ先のビルに入ったところ」 「うー。走ってもいい?」 「え」  普通に歩いていたら凍死しそうだから、いっそのこと、走って温まった方がいい。もう一ブロックならすぐだ。バッグを抱えて走り出すと、吉岡君も少し後ろについて来た。ヒールじゃなくて、ぺたんこのスニーカーを履いてきて良かった。  目標のビルの前に着くと、走ったから体はポカポカになり、風向きのせいかビル風もおさまっていた。 「はあ、はあ、はあ、遠藤さんて、足、速いな」 「そう?」 「俺、陸上部だったから、足は自慢なんだけど、遠藤さんについて来るのに、結構本気で走ったぞ」 「私も陸上部だったから」 吉岡君の目が、きらりと光った。
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