1 丸の内デビュー

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 社内システムのあまりの使い勝手の悪さに、仲の良い先輩にいつも文句を言っていたら、本社で始まったシステム更新プロジェクトに参加するように、と指名されてしまった。相模原工場のユーザー代表だそう。きっと、他の人は忙しくてそんな雑務をしている余裕がないから、新人の私ならいいだろう、という課長の差金だ。  でも毎週金曜日の午後、丸の内の本社でユーザーを集めた会議に出席するだけの簡単なお仕事。文句なしに引き受けさせていただいた。毎週、丸の内に堂々とお仕事で行けるなんて、夢が叶ったのと同じじゃない?  それなのに、いざ会議に出てみると、偉そうな本社の人がずらりと対面にいて難しそうな顔をしているから、指名されても緊張でろくに発言もできない。さらに資料の上に、ペットボトルのお茶をひっくり返してしまう大失態をしてしまった。せっかく毎週、本社に出張できるお仕事が降ってきたのに、こんなドジを踏んで交代させられたら大変。ちゃんとしなきゃ。 「では、続きを。遠藤さん、現行の経費申請システムの画面で、不満に感じているところは、どんなところですか?」  狭間さんは、何事も無かったように、にこやかな笑顔で質問を再開した。やっぱりイケメンだ。うちの工場には、絶対いないな。
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