与えられた義務

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月出し(つきだし)の風を受けて直ぐに戻ってきたそのけったいな術。真に興味深いでありんすな。(レツ)(キョウ)(ぬし)さんの御相手をしてやっておくんなんし。」 女性がそう言うと二人が錫杖を構えた。 あの女性は危険だと身体が叫びを上げて知らせる。 時貞さんと目を合わせ瞬間移動し、攻撃を仕掛ける。しかしそれはいとも容易く錫杖で受け止められ、流れるように飛んできた廻し蹴りによって私達の身体は元いた場所へ押し戻された。 再度瞬間移動で仕掛ける。現れるは女性の背後。こちらの動きに反応しきれていない。先ずは貴女からです。 それを防ぐように現れる二つの影。 下から上へと駆け上る錫杖によってその攻撃はまたもや受け止められ、勢いそのままに外へと吹き飛ばされる私達。 間違いない今のは──。 「気付いたでありんすか?主さんが見た通り怯と劣も同じ術を使うのでありんす。」 その能力は瞬間移動。しかもその精度は私達と同等。いやそれ以上の可能性が高い。 一対一ならば時貞さんが勝てる可能性は高いが、レベルの低い今の私では完全に足手まとい。私を気にしながら戦えば後ろの女性の扇子の攻撃が飛んでくる。 ここで死ぬわけにはいかない。私が選んだのは戦略的撤退。 「時貞さん。一旦引きましょう。」 その場を離れ地表に降り立つ。先程の三人組は追ってくる気配はない。簡単には勝たせてもらえませんね。 目線を下げ、残る十万の敵へと向ける。水流の攻撃により敵の陣形は散って砕けており未だに立て直せていない。 私は50cmほどの厚さのスクエアボックスを発動させ敵の頭上に落とすと、押し潰されまいと皆が手で押し上げる。空いた胴体をカッターが一直線に切り裂いていく。 少し離れた場所で戦う時貞さんを見ると同じように風の能力で上から押さえ付け、態勢が崩れたところを氷の刀で切り裂いていくところだった。スクエアボックスを解除し命力が還元される。 2対100,000。いかに命力と体力を抑えるかが生き残るための鍵となる。 何度も何度もその流れで敵を裂くこと一時間。 これまでの簡素な武装とは違う重厚な鎧を纏った巨体の男が現れる。兜には日輪を模した飾りが付いている。 「また会えたな。」 手に握られた一振りの小太刀。貴方は一次侵攻のときの・・・。先の戦いを思い出す。 両者ほぼ当時に仕掛ける。先と同じように刃を分裂させ身体を裂こうと襲い掛かるも予想よりも堅牢な鎧に弾かれ刃が宙に舞う。迫る大矛。刃のガードが間に合わないことを悟りスクエアボックスでガードするがそれは綺麗に裂かれ左肩から右の腰へかけて一筋の線を引く。 COLが発動し治療を始めた。 あの武器は特殊能力が付与されているだけで、能力によって作り出されたものではないのでデスマシンガンは効かない。となると──。 【(0.2×0.2×0.2)×8】 出現する8つの小さなスクエアボックス。それは敵の手足の関節を囲うように現れ動きを止める。 これでもう動くことは出来ませ──、 こちらの意に反しそれは破られる。敵は力任せに身体を屈めスクエアボックスを破壊した。 「こんな小箱で俺を止められると思うなよ。鍛え方が違うんでな。」 すみません。少し見くびりました。 【(0.05×0.05×2)×100】 身体に這って絡みつくように地面から生える100本の柱。それらは複雑に絡み合い、相手から動くという自由を奪う。 「百本揃えば堅牢の檻、といったところですかね。」 敵の兜を奪いそう呟く。 「それを言うなら三本の・・・まァ細かいことなどいいか。しかしまたしてやられたな。次こそ楽しみにしておけ。」 お待ちしています、そう伝えてその首を切り裂いた。 敵兵−1,500。 先の戦いを学習し強くなっている?それに今の口振り。これが続くのであれば・・・。 いえ。今は目の前のことだけ考えましょう。自らに喝を入れその場を去った。
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