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敵の強さを鑑みて時貞さんと合流することにした。後方から抜け出してきた能力持ちの騎馬隊や武将クラスの相手には時貞さんが対応し、私はサポートに徹した。
共に残りの命力はもう殆ど無い。懐から虹玉を取り出し二つに割って時貞さんと共に胸に押し当て命力と体力を回復する。まだ死ぬわけにはいかない。
その直後、二人の間を刃が駆け抜ける。
「殺される準備は出来たかよ?」
好戦的な棘のある声。たしかあれは細川忠利さん。二次侵攻のときに御相手した方。
こちらに伸びる浦波羅。その刃節をスクエアボックスで固定する。それを見て敵が嫌らしい笑みを浮かべる。
刃を柄から切り離すとそこから生える様に新たな刃が生まれた。そして何度もそれを繰り返し、切り離された刃が蛇のように宙を泳ぎ始める。デスマシンガンで柄を攻撃しようとするが刃の蛇と亀甲の盾に防がれる。
時貞さんも仕掛けるが素早い刃の蛇によって防がれていた。
左から幕府軍の兵士であろう年配の男が現れる。
「氏鉄さん。わざわざ来てくれなくてもこんな奴ら俺だけで充分殺せますよ?」
「私は心配なんだよ君のことがね。念には念を。年寄りの勝手なお節介だと思って許しておくれ。」
氏鉄と呼ばれたその男はこちらに目線を移し名乗りを上げる。
「年寄りだと思って侮ることなかれ。かつて家康様と共に時代を作ったこの私。美濃大垣藩初代藩主、戸田氏鉄。攻める力は衰えたとも、支える力は未だに健在。」
印を結ぶように手を組むと時貞さんの足元に丸い光芒が描かれ、そこから伸びた鎖が時貞さんの脚に絡みつく。
迫る数匹の刃の蛇。何やら時貞さんの様子がおかしい。能力を封じられている?
まずい。
そう思った瞬間には時貞さんの元へ身体を飛ばしていた。
刃と時貞さんの間。時貞さんに背を向け守るように被さる。
刃は私の胸を食い破るように深く突き刺さった。
「まさかこんな形で外れるとは。」
宙に浮かぶのは氏鉄さんの頭。私のカッターがその首を裂いていた。同時に現れる敵兵3,200消滅の知らせ。
その一瞬の動静に、事態を把握しきれていない様子の細川さんが目を見開く。
何を驚いているのですか。次は貴方ですよ。
カッターを分裂させ細川さんへ向けて放つ。それを追うように無数のスクエアボックスが追撃をかける。
「だからその攻撃は見切ったって言ってんだ──」
背後から突き刺さりその胸を貫く刃。
「氏鉄さんの大垣正宗・・・。なんで・・・。」
柄を握るように付けられたスクエアボックス。
貴方へ攻撃する直前。戸田さんの刀にスクエアボックスを固定し瞬間移動で貴方の背後へと移動させたのですよ。あとは簡単。命力を追加したそのスクエアボックスを操作し油断した貴方をゆっくりと突き刺すのみ。
あと一人くらい増援が必要だったようですね。
苦悶の表情とともに地に崩れると同時に敵兵6,000が姿を消した。
空いた胸に手を当てる。そこには捩じ切られたように大きく穴の空いた制命栓があった。制命栓が壊されたことにより私のレベルは1,000から元の7,000へ戻ったようだった。
敵兵が随分と近くまで来ていますね。
【(1×1×0.03)×20】
放射状に放たれた20枚のプレートが砕いていく。
「時貞さん一度前線を離れましょう。」
地面から生える無数の蔦が敵の爪先から脳天めがけて突き抜ける。
時貞さんが攻撃を終えるのを待って攻撃の届かない後方へと飛んだ。
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