煙弾く傘と三つ生り翡翠

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煙弾く傘と三つ生り翡翠

──クーバル(Coebar)ケニオス(Kenios)── □βl@ck★OUT世界同時配信 3ヶ月前  プログラム班 管理棟 Room code:NC7-33-38 あーーー。長かったーー。 読み終えた本を机に伏して置き大きく背伸びをする。 黒田さんとこの研究員に薦められて読んでみたけど中々面白かったな。 ワールドデータライブラリー。この管理棟に隣接するそこにはブラックアウトのクエスト作成のための題材用資料として世界中のお伽話やらコミックやら大昔の日記なんかも入っていた。 まぁ、どれも原本のコピーだが読む分には問題ない。そもそもデータでも読めるからわざわざ現物を取りに来る奴も少ないが。 でも俺は断固現物派。それだけは譲れない。 机に置いた本をもう一度手に取る。 どちらの表紙にも何も書かれていない真白な冊子で、一ページ目に綴られたその文字から“(けむ)弾く傘と三つ生り翡翠(ひすい)”と呼ばれていた。 それにしてもこの日記の作者の人生過酷すぎねぇ?俺は無理だわ。 つーか性格悪っ、いやまぁ良い奴でも・・・あるのか? 最後のページに書かれた句の続きが反対側に続いてるみたいだけど文字が滲んでてよく見えないんだよなー。俺こういうの滅茶苦茶気になるタイプなんだよな。 そんなことを考えてるとふとアイデアが浮かびキーボードを叩く。 あったあった! 俺がプログラムしたクエストのひとつ“一揆当千クエスト”のファイルを開く。日本のクエストとはいえ設置場所かなり田舎の僻地で難易度的にもビギナー向けのやつだし多少変えても影響ないっしょ。 照明が明るく照らす部屋に響くタイピング音。俺はクエストボスのコードをこっそり書き換えた。 バレなきゃバレてないってことだから。大丈夫。うん。 ・・・バレたら秒で直すわ。 「クーバル。ランチ行こうぜー。」 待ってましたよランチタイム!タイムが付く言葉で一番好き! 「はいはい、今行きますよー。」 エンターキーを丁寧に押し込み部屋を出た。
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