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一揆当千クエスト
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長崎県 南島原市 原城跡
私の目には月光を受けその外殻を白く弛ませるクエストボックスが映っていた。
伊鶴さんの命を奪ったこのクエスト。通常のものとは明らかに何かが異なるこのクエストが伝えたかった想い、私が読み取ることができなかったそれを知るため私はこの場所へ戻ってきた。
歩みを進め重いその扉を開き、中の機械へDIMを入れた。
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クエスト名 :【一揆当千クエスト】
クエスト内容:一揆軍を率いて幕府軍を退けろ!
推奨レベル :1,200以上
参加可能人数:5名まで
クリア報酬 :虹玉
各種アイテム
(行動内容によって変化します)
参加待機人数 1
クエストを開始しますか?
▷〘YES〙〘NO〙
──────────────────────
YESの文字に触れると画面が切り替わる。
──────────────────────
DIMに登録されているプレイヤーレベルと
スキャナーによる計測実数値が異なります
計測実数値でクエストを開始しますか?』
▷〘YES〙〘NO〙
──────────────────────
先程と同じ方へ手を触れると意識がクエストの中へと飛ばされた──。
仄暗い部屋の中で座って向かい合う十数人の人影。
揺らめく蝋燭の火が見覚えのある面々を照らしている。
「益田様。代官を討ちその勢いままにその数を増やした島原の一揆勢とも合流し大名共を迎え討つ準備はできております。この原城に迫る板倉を討ち仲間の無念を晴らしましょう。」
ひとりの男が部屋の一番奥にいる男へ向かって語りかける。
「蘆塚殿の言うとおり。悪政を敷き我々の心身を焼いていた奴らの業火からいよいよ抜け出すときが来た。デウス様の加護と神童天草四郎が我々を勝利へと導いてくれる。」
そういって手を引かれ皆の前に出された少年。現代で当てはめると中学生くらいの歳でしょうか。その少年は歓声が上がり熱気が満ちた目をした皆とは裏腹に、物憂げな冷めた目で皆を見返していた。
決起集会が終わり各々それぞれの持ち場へと散っていく。
「貴方のお名前はなんと言うのですか。」
先程の少年が声をかけてくる。
「私は・・・四郎と言います。」
色々とややこしくなるので下の名前だけを伝えた。
「四郎さん、ですか。偶然ですね。僕も四郎と言います。天草四郎、父から与えられた名です。本当の名では無いのですが──。」
先程見せた物憂げな表情を再び見せたかと思うと、何かを思いついたように再び話し出す。
「もしよければ僕と貴方二人だけのときは僕のことを時貞と呼んでもらえませんか?可笑しなことを言いますがどうにも貴方が他人は思えなくて──。」
時貞さんの提案を受け入れ、いつものように雑談をしてしばらく経つと別れの合図を告げて闇夜に消えていった。
視界が徐々にブラックアウトし目に映る景色が切り替わる───。
身に纏った黒い小袖袴を潮風が靡かせる。振り向くと今は使われていない小さな城が目に入る。
海岸線から海に突出し、三方を海に囲まれた土地に建てられた一揆軍の防衛地であるこの原城。
その横幅1kmに渡って幕府軍の侵入を拒む柵が建てられている。
時貞さんに話を聞いたところ、今回のこちらの総勢は37,000人。その内女性や老人を除いた勢力として見込める人数は24,000人。
この部分は変わりないですね。
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