14人が本棚に入れています
本棚に追加
返事
ハルは、おじいさんからの手紙をカバンの中から取り出し、おじいさんに問いかけるように読んだ。
「……あなたは今どこにいますか?」
手紙をしばらく見つめてから半分に折ると、両手で宝物のように持った。そして、瞳を閉じて自分のおでこに手紙を当てて、顔を下に向けると
「おじいさんの書いてくれた物語の役、必ず完璧に仕上げて演じます。だからどうか、見ていてください」
と呟いた。
その時、葉擦れの音がした。
顔を上げると、福寿草の花がふと目に入り、4年前に見た時よりも沢山咲いている事に気がついた。
ハルは “ 黄色い幸せの花 ” をずっと見つめていると、自分はお芝居をする事が幸福な事なのだと確信した。
急に涙が溢れ出てきた。
日が暮れるまで、手紙を抱きしめながら、涙でぼやけて見える花をずっと見続けていた。
最初のコメントを投稿しよう!