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単刀直入
昔は流星と呼ぶ父と母の声がこの家に響いていたのに。
俺は世の中で言う、お金持ちの子供らしい。
両親ともに外交官。最後に両親見たのはいつだろう。
小さい頃はよく家にいてくれたが、高校生になった今は「もうひとりで大丈夫でしょ。」と、外国によく仕事に行くようになった。今はもう殆ど外国にいて、お金は振込でもらっている。
昔は、城みたいに大きな家が大好きだった。けど、独りでいることが多くなると、昔みたいな気持ちは消え、この家の大きさがウザいと思うようになった。
けどなんでウザいと思うのか、そんなのきっと、
寂しさから生まれたんだろう。
休日。そろそろおなかが減ったなと思い、冷蔵庫へ向かった。
しかし中には何もなかった。
はぁ…、買い物行かなきゃな。
お腹をさすりながら、俺はリビングにあるソファに座った。
「買いに行くのめんどくせぇ〜」
声に出してもどうにもならない。ただ、お腹が空いていくだけだ。
うちにお手伝いさんはいない。
小さい頃は両親が必ず夕方ぐらいに帰って一緒にいることができたけど、高校生になった今は独り。
そうだ!デリバリーだ!
俺は命に泉でも見つけたかのように、広告を置いている棚へ向かった。
「えーと…ピザにうどんにぞば、中華に寿司」
いやぁ迷いますなぁ〜。
変な笑みを浮かべながら、俺は広告の料理をじっくり見る。
なんだが料理たちが、食べて食べてと言っているようだ。
「よし、寿司にしよう!しかも特上のっ!」
ウキウキ気分のなか電話をする。
デリバリー♪デリバリー♪
「そろそろかなぁ〜」
あれから何十分たっただろうか。
もう何度もお腹の悲鳴を聞いた。
ピンポーン。玄関からチャイムが鳴った。
はいはーい!待ってました!
俺は急いで玄関へ向かう。
「はいはーい!」
ウキウキ気分でドアを開ける。
しかし視界には、デリバリー服の男性などいなかった。
あれ?
頭を下ろしてみる。
そこには長髪で黄色のワンピースを着た女子とその女子と手を繋ぐ、小さい男の子がいた。
「あのー…どちら様でしょうか?」
女子は俺を眺めるように見ている。
「あなた…北原流星ですよね」
「はい…え」
なんで、俺の名前。
「名前…なんで知って…」
「単刀直入にお願いします。私たちの父親になって下さい」
そう、彼女はそう言った。
はぁ?
はぁ・・・?
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