第二十一章 幸せへのきざはし

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 真さんが、キャンドルを辞める。  でも、そしたら……。 「詩央さんや、他のスタッフさんは、そのことを知ってるんですか?」 「うん。詩央くんに、ちょっと言ってみた。そうしたら」  そうしたら。 『北條さんがキャンドルを辞めるなら、僕も辞めます!』 「こんな言葉が、返ってきてね」  他のスタッフも同じ意見だ、と鼻息の荒い詩央だ。 「私が辞めれば、遠田の息のかかった人間が次期店長に収まるだろう」  そうすれば、また彼がわがまま放題にキャンドルに通うことになる。 「それを気にして、決心がつかなかったんだけどね」 「でも、真さん。どうして急に、お店を辞めるだなんて」 「それは、今後の人生設計のためなんだ」  そこで真は、杏の肩を抱いた。 「杏と結婚するんだ。もう半グレはやめて、堅気になりたいんだよ」 「真さん……」  それは嬉しいことだけど。  でも、詩央さんたちは犠牲にしたくない。  そんな杏の、思いだった。
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