第七章 大切な杏のために

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 ショッピングの後は、映画を観て。  少し寒い街を、頬を赤くしながら歩いて。 「杏、私のコートのポケットに手を入れて」 「こう、ですか?」  そうすると、真の大きな手のひらが、杏の手を握ってくれた。 「デートでは、手をつなぐ。そうだろ?」 「あ……」  頬どころか、耳まで赤くして、杏は喜んだ。 (生まれて初めての、デート。そして、手をつないじゃった!) 「……やはり、少し照れるな」 「真さんも、ですか?」 「デートで自分から手をつないだことは、無いんだよ」  杏といると、初めてだらけになるな。  身も心も温かくしてくれるこの少年を、真は大切に感じていた。  杏の方から提案されたデートだが、無心で楽しんでいる自分がここにいる。 「真さん、そろそろ帰りましょう。僕、お夕食の準備があります」 「それは心配に及ばないよ。ちゃんとレストランを予約してある」  たまには家事を休むといい、と真は言ってくれる。  そんな彼に、杏は深い思いやりを感じた。 「僕、嬉しいです」 「嬉しいのは、私の方もだよ」 「お料理はやっぱり、ステーキですか?」 「私だって、いつもいつもステーキを食べているわけじゃないんだ」  冗談を言い合いながら入ったのは、一流ホテルの料亭だった。
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