同じクラスの

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同じクラスの

 同じクラスの女子、白金遥の姉が並外れに美しいという噂が、二年になってから広がった。白金姉を偶然見た昔馴染みの友人に聞けば、艶やかな髪をした、目元が印象的な美しい女性らしい。僕はその話を聞いてさほど興味をひかれなかったが、部活の先輩の兄の話を聞いてから、度々見る白金妹をよく思い出すようになった。 「で、その部活の先輩が話していたこの学校の伝説とやらは、どんな話なのよ」  昨日の帰り際、例の昔馴染みに、先輩から聞いた噂を、小耳に挟んだことを知らせれば案の定、朝一番で僕の所にやってきた。 「白金遥って、このクラスにいるよね」 「あぁ、あの姉ちゃんが凄い綺麗で噂の」 「あのさぁ。噂を流したのは、お前だろ」 「まぁまぁ。で、話の続きは」  昔馴染み、青木健斗は、肘を机につきながら興味深そうに顔を近づけた。俺は廉の顔を強引に遠ざけ、一つ、咳払いをした。 「七年前の卒業式、ちょうど白金姉が卒業する日、内乱が起こったらしい」  悪戯っぽい笑みを浮かべ、話を続ける。 「何でも、白金姉に卒業生だけではなく、二年、あろうことか一年まで告白しまくったらしいんだ。その結果、卒業式は大混乱。しかも、教師までも白金姉を口説いたっていう噂もあるんだぜ」  健は「それで、姉ちゃんは誰と付き合ったの」と目を輝かせながら聞いてきた。あまりにも子犬に似ていたものだから、思わず吹き出してしまう。白い目で見られたものだから、「わるい」と一言謝りを入れてから、たっぷりと間を置く。 「実は、誰とも付き合わなかったんだ」 「あー、他校に好きな人がいたパターンだな」と一人で納得していたが、実は俺も知らない。先輩が勿体ぶって教えてくれなかったとかではなく、先輩の兄も本当の所知らないらしい。  ‥余程の想い人がいたのだろうか。何やら高校三年間ずっと、恋人を作らなかったらしい。 「はい、朝のST始めるぞー」  前方の扉が開き、四十代半ばの男性教師が声を上げた。健は、二つ後ろにある自分の席に座ると、静かに一限に必要な教科書を机から出した。俺はというと、鍵が閉まった窓に目を向け、反射した白金遥の姿を探す。白金遥は、長い髪を珍しい形に結っていて、ペンケースを弄りながら先生の話を聞いていた。よく開いた目に、綺麗な三日月のような二重。少し厚めの唇が、太陽の光を反射して輝く。  長いこと窓を見つめ、自分のしていることが恥ずかしくなって、俯いた。今日初めて、白金遥の顔をしっかり見た気がした。眩しい日差しが、僕の邪魔をした。
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