4人が本棚に入れています
本棚に追加
僕、赤羽相馬は今年で17になる、男子高校生だ。姉が二人、妹が三人と今時珍しいくらいの大家族の長男で、珍しいくらい偏った家計に生まれてしまった可哀想な男子高校生なのだ。そのせいか女の人の扱い方はよく分かっているし、生まれてこのかた家族以外の女の人を怒らせたことはなかった。それに女の人の考えていることは、手に取るように分かったし、それなりにモテた。
だが、一人例外がいた。それは、噂になった白金妹だ。僕は、白金妹だけは何を考えているか分からなかったのだ。
午後の授業が全て終わって、いつものように部活が終わるまで本を読んでいると、廊下から珍しく声が聞こえた。
一人は、確か隣のクラスの男子で、もう一人はあの白金遥だった。
「ねぇ、白金さん。白金さんのお姉さんを紹介して欲しんだけど、ダメかな」
「ごめんね、お姉ちゃん、そういうの苦手だから‥」
「お願い、せめてラインだけでも」
こうやって何度か白金妹が、姉目当てに声をかけられていることは珍しくもなかった。僕が把握しているだけでも、今月で三件同じようなことがあった。
隣のクラスのやつは、必死になっているが、白金妹は紹介する気はないらしい。こうなると、少し、白金妹が可哀想になってきた。
「でもなぁ、あいつもあぁなるとは思わないだろうなぁ」
誰もいない教室で、静かにこぼした。当然その低い声に反応する人なんていなくて、僕は読みかけの本を閉じて、机に突っ伏した。ひんやりとした感触に、薄ら眠気を覚えた。
白金妹に寄ってくる男は、姉目当てだが、よく見ると妹のほうも可愛らしい。毎日、せめてラインだけでもと言い寄っている男も、一週間経てば妹の方にゾッコンだったという話は少なくない。そうなると、やっと姉を紹介してもらうのに、興味など薄れてしまうことの方が多いとのこと。全く、本末転倒だ。
最初のコメントを投稿しよう!