同じクラスの

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 他愛のない会話をしているうちに、教室は薄暗くなって、遥の表情が見えずらくなってしまった。俺は 「帰り一人?危ないよ、送っていこっか」と、立ち上がると、遥は、「あ、大丈夫。おねぇちゃんが、迎えにきているから」とやんわり断った。 「そんなんだ、じゃあ、校門まで送ってくよ」  姉が気になる一方、もっと遥と居たくなって、柄にもなく内心焦りながら、いつものように声をかけた。遥は、最初のうちは断っていたものの、僕がしつこく粘っていると、とうとうおれてくれた。僕は、さりげなく遥の鞄を片手に持つと、「いこっか」と笑いかけた。  遥の隣を歩けば、思ったより遥が小さくて、ちょっとびっくりした。僕は、大股にならないように気をつけながら歩いて、歩くたびに揺れる髪に少しどきっとした。 「遥の髪、きれいだよね」 「おねぇちゃんがね、いつも高いリンス買ってきてくれるから」 「そうなんだ、自慢のお姉さんなんだね」  遥は驚いた表情をしてから、幼い笑顔で「うん」と嬉しそうにした。 「私のおねぇちゃんは、自慢できるほど綺麗なんだよ」 「じゃあ、その自慢のお姉さんのこと、今度聞かせてね」  前方で、淡い水色の軽と遥と雰囲気がよく似た女の人が立っていたので、「気を付けて」と手を振った。遥は、恥ずかしそうに、小さく手を降った。  徐々に遠ざかっていく遥を横目に、そうか、あの人が例の、と勝手に納得した。平凡な視力では、はっきりと顔を見ることは出来なかったが、ぼんやりとする中、確かに整った顔がそこにある気がした。  後ろから、春の匂いをのせた強い風が吹く。遥の結った髪と、姉の髪が大きく揺れた。その隙間から覗かせる二つの顔は、似ているようで似ていなかった。だけど、どちらも秀麗で、目を奪われるほど美しい笑い方をしていた。
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