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西日が落ち、街頭が照らす夜道に僕は一度くしゃみをした。夕暮れに溶けあった姉妹を見た後、あっという間に日常は闇に飲み込まれていった。神聖さえ感じる姉妹が実は全て妄想だったのではないかと、不思議な気持ちになるのだが、瞼にまとわりつく二人の存在は大きくなるばかりであった。
一歩夜道を彷徨う。白線が消えかかった古びたコンクリート。所々で照らす白い光を目で追っていくと、遠くから見覚えある顔が近づいてきた。
「舞…」
「お兄ちゃん、遅いっ。帰りが七時を超えるときは連絡してってお母さんも言ってたでしょ」
はっとして携帯を見る。画面を光らせると、七時半前を映している。驚いた。高校を出たときは六時だと記憶している。学校から家まで自転車で三十分もかからない。今日は寄り道せず家に帰ってきたはずなのに何故こんなに時間がかかったのだろうと首をかしげていたが、妹の舞の声で気が付いた。
「お兄ちゃん、自転車はどうしたの。朝乗っていたよね」
「あっ……」
「信じられない。もしかして高校に置いてきたの」
「多分」
あきれた表情の妹は僕に背を向けて、帰路をたどる。急いで後を追うのだが、中々追いつかない。
「ねぇ、速くない」
「速くない」
僕は何度か首をかしげてから小走りになると、やっと隣に並ぶことができた。束の間に、妹は走り出す。仕方なく後ろについていく形で走ると、すぐに速度が遅くなる。
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