結婚式

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 私、白金小雪は、今年で二十五になる、白金遥の姉だ。私と遥六つ歳が離れていて、私はというとやっと三十を過ぎようとしていたところだった。  三十にもなって、人生はつまらない、などという事を近頃よく考える。別段、良い会社に勤めているお陰か、手には余るくらいのお金があり、何一つ不自由ない生活をおくれている。だが、目を閉じて、ふと過去の事を思い出せば、なるほど。と、一人で納得し、自身の腐りきった外道の部分を呪うのであった。  私は、うつくしい。それだからこそ許されたことは、幾度かあった。だが、それを乱用したことなんて一度もなくて、むしろ整形したいと考えたことは数え切れないほどある。この話は、誰にも話したことがない。何故なら、それはこころの底にしまった、大切な感情だからだ。大切なものは、誰にも知られたくない。あの秘密だって、誰にも話したことがなかった。あれは、私と遥の秘密。他の誰かが知らなくていいこと。だからこそ秘密というのは、甘い蜜のような苦いチョコレートのような、得体のしれない味をしているのであって、私のいわば薬の様な役割をしているのである。  しかし、私にとって万能薬である秘密は、遙にとって毒だった。ただ、私はそれが遥にとって毒だと知りつつも、私は遥に毒を与え続けた。  わたしは、美しいだけの、ただの外道なのだ。
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