同じクラスの

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 突然後ろの扉が開いた。二人そろって振り返ると、タイミングが悪く、扉を開けたのは遥だった。遥は驚いた表情で僕たちを見比べると、可愛らしく笑った。 「そうまくんと、青木くん。どうしたの、何かあった?」 「いや、別に……」 「それじゃあ相馬、頼んだぞ」 「えっ」  健は勢いよく立ち上がり、筆記用具を片付けたらすぐに前の教室から出ていった。廊下は健が走るリズミカルな音が響く。僕と遥は目を合わせ、何度か笑った。遥はこちらに近づいてきて、倒れた椅子を直す。ごめん、と声をかけると、「面白いね、青木くん」と別段気にする様子でもなかった。俺は少しの嫉妬を隠し、「どうしたの。こんな遅くに」と遥に聞いた。 「現文の教科書持って帰るの忘れちゃって。引き返してきちゃった」 「明日小テストだもんね。言ってくれれば写真送ったのに」 「いいの。私、結構教科書に書き込んじゃうから」  遥は窓際の列の前から二番目の席に早歩きで駆けていき、分厚い教科書を手に取った。僕は健がくっつけた机を元に戻して、鞄を背負う。そうして先週のように遥を誘う。 「今日も校門まで送るよ。お姉さんの送りだよね」 「今日はお姉ちゃんバイトでいないんだ」 「そっか」  いくら仲が良いからと言って毎日姉が送るわけではないのだろう。噂によれば遥の親はいないらしい。遥と同じ中学だった生徒に聞いたことがある。どうやら数年前に交通事故で亡くなったらしい。原因は不明で、居眠り運転の可能性があるらしい。しかし父と母どちらも弁護士だったらしく、「白金さん夫婦に限ってそれはない」と噂されたとのこと。  姉が、遥を養ってきたのだろう。遥は成績が良い。姉も賢い人なのだろう。遥の持ち物は、貧乏からかけ離れている。 「じゃあ、家まで送るよ。僕、遥の家のほうだと思うし」 「もしかして榊中学?」 「うん、だから一緒に帰ろ」  断られるのかと少し身構えたが、遥は頷いた。そうして可愛くこちらへ駆けつけてきた。 「うん、帰ろ」  微笑む遥と教室を出て、教室の電気を消した。辺りはすっかり暗くなった。
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