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それからしばし無言で二人でサンドイッチを頬張る。会話をしようにも、何も話題が出てこない。その所為で、私はこの無言の空間がほんの少し辛かった。私の後ろにはニコラが控えてくれているので、完全に二人きりというわけではない。
でも……なんというか、無駄にドキドキすると言いますか……。
「……エレノア」
私がそんなことを考えていると、不意にカーティス様が私の名前を呼ぶ。なので、私は「……どうか、なさいましたか?」と言葉を返した。
すると、カーティス様は「少し、自己紹介でもしておくか」とおっしゃった。
……そういえば、私たちは互いのことをよく知らない。最長で一年半も一緒に暮らすのだから、少しくらい自己紹介をしておいた方がいいの……かも。
「そうでございますね。お飾りの婚約者とはいっても、互いのことを何も知らなければ不審に思われますものね」
私の目的はカーティス様のお母様を欺くこと。だから、カーティス様とはそこそこいい関係を築いているフリをしなくてはならない。その際に、何も知らないというのは大問題だ。そう、思った。
「何か聞きたいことがあれば、遠慮なく聞いてくれ。ただし、女性関係についてはタブーだ」
カーティス様はそうおっしゃって、サンドイッチを口に放り込まれる。……女性関係のお話は、タブーなのね。まぁ、女性不信だというし、それもある意味納得だわ。……さて、まずは何を聞こうかしら?
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