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「……そうだな。よし、それにしよう」
即決だった。
いや、カーティス様真面目にデザイン画見ていらっしゃらないわよね……?
そう思って彼の目を見つめれば、彼の視線はデザイン画ではなく私に注がれていた。……え、何?
「あの、カーティス様?」
恐る恐るそう声をかける。しかし、カーティス様が返答をくださるよりも早く、女性が動いた。
「かしこまりました。では、さっそく作成に取り掛かりましょう。ところで、あしらう宝石は何になされます?」
「……一番高価なもので、頼む」
カーティス様が至極真剣な表情でそうおっしゃる。……いや、あっさりと一番高価なものっておっしゃったけれど……。
(お値段、いくらなの……?)
値段も見ずに買い物なんて、さすがの私でもしたことがない。対するカーティス様はこれが普通らしい。……金銭感覚の違いが、浮き彫りになったような気がした。
「かしこまりましたわ。では、急ピッチで作成させていただきますわ。……出来上がりは十日後になります」
「あぁ、頼む」
カーティス様がそうおっしゃると、女性は「では、契約書を取ってきますね」と言って部屋を一旦出て行く。
残されたのは、私とカーティス様。……少し、お話したい。
「あの、カーティス様」
頬を引きつらせながらそう言うと、彼はきょとんとした表情で私のことを見つめられた。……どうして、私が頬を引きつらせているのかなど想像もされていないのだろう。全く、カーティス様らしい。
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