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「お値段、見なくてもよろしかったのでしょうか?」
出来る限り優しくそう問いかければ、カーティス様は「構わない」と何のためらいもなくおっしゃった。か、構わないって……。
「そもそも、俺は辺境侯なんだ。……そこら辺の貴族に甘くみられるわけにはいかない」
「……といいますと」
「婚約者に安物をプレゼントするなんて思われたら、面汚しだ」
……つまり、カーティス様はクラルヴァイン侯爵家の面目を保つためにも、婚約指輪を高価なものにされたらしい。
納得したわ。
「それに……その、だな」
「……カーティス様?」
ふと、カーティス様が口元を押さえられた。……これは、大体照れているときの仕草である。
「エレノアには、最高級のものを渡したいんだ。……俺の、自己満足だが」
きっと、カーティス様は不器用なのだろう。それを、私は理解した。
「……カーティス様」
彼の頬をつついて、私はそう声をかける。すると、カーティス様がきょとんとされた表情で私を見つめてこられる。
「私にとって、高価なものをいただくよりもカーティス様のお側に居るのが最高の幸せなのでございますよ」
本当に、そうなのだ。男性にこんな感情を抱くことになるなんて、昔の私が知ったら驚くだろう。
でも、私はこのお方が好き。不器用で、照れ屋で。傲慢なところもあるけれど、とっても優しいこのお方が――どうしようもないほど、好き。愛している……の、かも。
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