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「あなたの、思う通りになさったらいいわ」
風呂上がりの午後9時。
就寝前のひととき、私は、食卓のテーブルを家内と一緒に囲んでいた。
家内の淹れてくれた熱いお茶を啜りながら、私はある決意を妻に告げた。
私はもう10年以上前から、会社や同僚に対して不実を働いていた。
だが、会社の同僚に対して偽り続けてきたことにいよいよ耐えられなくなったのだ。
そして今夜、家内に打ち明けた。
明日会社に全てを打ち明けることにしたのだと。
そのことに対して、驚いたり、反対されたりするのかと思ってはいたが、意外なほど家内はあっさりとそれを受け入れてくれた。
まるでこの日が来るのを覚悟していたかのように。
「ああ、私はもう決めた。もう隠し続けることに疲れたんだよ。だから明日、会社でありのままをぶち撒けてくる」
「あなたが決めた事なら、私は反対しませんよ。
思った通りにしてくださいな」
「ああ、定年までまだ何年かあるが、いつかバレるんじゃないかと、不安になりながら自席に座っているのも体に悪いしな。
お前にも迷惑掛けることになるが、明日は会社も社宅も蜂の巣をつついたような騒ぎになる。この社宅に居づらかったら、お前は先に実家に帰ってもいいぞ」
「大丈夫ですよ。あなたと最後までここに居ます。一蓮托生よ。知ってて止めなかった私も同罪ですもの」
「お…お前」
「あなた…」
この夜。私と家内は、何年ぶりかに寝所を共にした。
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