ふたりぼっち、ひとりぼっち

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ふたりぼっち、ひとりぼっち

俺の故郷… フワフワワっとした綿を実から吐き出す木 寄生木にしてる虫が七色の金粉を撒き散らす。 そいつらを捕食する影響なのかな… 陽の光を反射する鳥達の羽も七色に光って見える 幻想的光景 今風に言うと「映える」 当時は目にするそれらは俺には日常の風景 目には留まればキレイだとは思う。 ただ、それだけ 俺らにとってはただの日常の一コマ そしてすぐに別の現実に囚われる。 「外の世界を知りたい」 「この美しくも窮屈な内の世界から飛び出たい」 外の世界との大きな壁になる断崖に立つ。 そして外の世界に恋い焦がれるのだ。 今思えばそれは贅沢で我儘な欲求だ。 安全な内の世界に立った上で出来た娯楽。 外の世界に立ちつくしあの日々を回顧する今、 あれらの幻想的風景を含む僕らの世界は、恵まれたな夢の世界だった 失って今初めて、思い知らされたよ。 その事を共有できる幼馴染みは…内と外、どちらの世界にも既にいないけど… 俺は自分の居場所を失っただけの「ぼっち」になった。 ************** 「なんで俺なんだろう」 今更意味の無い言葉を呟く それも何度目だろう… 土地を追われたのも仕方ない 時代が悪かった…のもあるのだろう こんなにドライな割り切り方してんのも無理している訳じゃない だって、過去は変えられないもの いや…ちょっと無理はしてるかなて… 真正面から受け止めると俺ら受けた理不尽に心がざわついく 俺は幼馴染みと「ふたりぼっち」になった時だって打ちひしがれてなかった それは、人権活動家に保護され、運良く良い生活を与えられたからじゃあない 幼馴染みのアイツが居てくれたからだ 生まれてから片時も離れた事がなかった 内の世界が失われても平常心でいられた …君幼馴染みの君は変わらず、隣にいたから 内の世界で通う事無かった学校に通わせてもらった 学んだ歴史という授業は目に鱗だ 「理不尽」がみっちり詰め込まれていたから ああ、理不尽ってのは歴史という名の別の名前なのだ 繰り返されるそれに俺ら一族の出番が来ただけなのだ、と理解した。 それは幼馴染みから天真爛漫を削っていくものだった 努めて平気なフリしてたけど俺には分かる 幼馴染み顔の笑顔から魂が抜けていくのが。 でも俺が呟き疲れた直接の原因はそれを嘆いてるものじゃあない 俺ら一族が代わりに入植した土地で周辺の氏族に攻め込まれ完全に居場所を失った事 それもノーだ。 ……そこに恨みがないと言えば嘘になるけど シンプルに、過去に固執するよりも 新しく歩き始める方が容易いと思った。 だけど、幼馴染みにとってはそうではなかった おとは逆で過去に固執する方が容易い生き方だった 幼馴染みの望みは 「一族に酷いことした連中に思い知らせてやりたい」だ シンプルで最もらしい。 「苦しい自分の心を手当てして欲しい」 そんな風に言っている様にみえなくもねいけど 俺にとってはね… 『アンタ、チョット変わってる。』 って思ったろ? 一応自覚はあるよ、変人って。 幼馴染みからはムッツリ変人」ってヘンテコな呼ばれ方をされてたし 「隠れ変人」だろそれいうなら…って毎度突っ込んではいたけどね。 …ちょっと話を戻す。 この恨みはらさずにおくべきかって役割って もっと奪われた物に愛着持っていた人間がやるもんでしょ ムッツリ変人の俺に劣らず幼馴染みも変人だったけど、熱血漢な奴だった けど俺はそういうタイプで無かった 俺は、そういう系の物語の主人公にはなれない 俺みたいに斜に構えてる人間は、そいつを陰から支える脇役の役目だろう 思う所は有るけど、俺なりに幼馴染みを支えようと決心した 「何で俺が」 なんで俺がこんな役を? なんでこんな俺なんかが? さっきの決意表明は余裕綽々だったんだな、と改めてほぞを噛む。 幼馴染みの苦しい胸の内を俺は何一つ分かっていなかった 「この恨み晴らさずにおくべきか」 その役割は奪われたものに強い愛着持っていた人間がやるもの…幼馴染みのように 廻り廻って俺の手の中に落ちるのか? 何でこんな俺なんかがこんな役割を? 心の中で幼馴染みに話しかける なあ、教えてくれよ 俺を一番に気にかけてくれた 何で…死んだ。 俺が代わりに死ねばよかったのに それこそ今更か… 答えの無い問いが頭の中をループする。 瞬間、自分の根っこがブラックホールに吸い込まれ抜けてしまう感覚に襲われる 何を持ってしても埋められない 喪失感 虚無感 幼馴染みのアイツの…代わりになる奴なんてこの世にいない 喪失感にひきづられない様に お前への贖罪の為に 俺は俺なりのやり方で前に進むよ お前に守られた命だ 俺が前に進むため 俺はお前の思いを継ぐよう 一族の汚名を晴らすため、復讐するのだ 
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