擬似彼女

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『1日だけ、恋人になってほしい。』 斗真がそんなLINEをしてきたのは、一昨日の夜のことだった。送られてきたその一文に、私は大きく動揺する。 『何、急に。どうしたの?』 私は、動揺しているのを気づかれたくなくて、精一杯冷静さを取り繕った返信をする。すると、すぐに既読がついてメッセージが届く。 『俺、松本さんと付き合うことになった。それで近々デートに行くことになったんだけど、その予行として付き合ってほしい。』 ……。 なんだ。 そういうことか。 私はあの子の「練習台」か。 私は、練習の相手として選ばれたに過ぎなかったんだ。 私のことを何とも思ってないからこそ、私に頼むことができるのだろう。 勝手に「何か」を期待してしまった自分を恨む。 続けてLINEが送られてくる。 『頼む。頼めるのは沙良しかいないから。』 そう言ってくるあたり、斗真はずるい。そう言えば私が断れないことを斗真はよく知っている。 こんな風に、私と斗真は、お互いがお互いをよく知っている。幼稚園の頃からの付き合いで、 私の方が斗真のことをよく知ってるのに、斗真は松本さんと付き合う。松本さんに斗真を取られた気がして悔しかった。 そして明日、1日という期限付きではあるけれど、私は斗真の擬似彼女になる。悲しさとほんの少しの嬉しさが合わさった複雑な気持ちが入り乱れる。明日のことを考えると、緊張して眠れない。 斗真は擬似彼女と何をしようとしてるのだろう。
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