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「美齊津唯斗の上履き、今どこにいますか」
10センチ四方の白い紙に黒いペンで書き、四つ折りにして左手で握る。握った左手を更に右手で包み、優しく息を吹きかける。両手を握ったまま額を当て目を瞑る。すると、左手の中がジワジワと温かくなってくる。
温かくなったら成功の合図。
手を開き、紙を開くと返事が書かれている。
「クラブ棟 水道」
中身を確認し、紙を切り刻んでゴミ箱に捨てた。
4時間目の授業が終わったところで何気なく唯斗に話しかける。
「上履き、まだないの」
唯斗は来客用スリッパを履いていた。
「まさか俺もされるなんて」
唯斗は朝から憂鬱な表情だった。
「まだそうと決まったわけじゃないでしょ。いつものうっかりかもしれないし。あそこは見たの?サッカークラブで出入りする所」
「クラブ棟?まだ見てないけど。でも昨日はクラブじゃなかったし」
「昨日はそっちには行ってないの?」
「クラブがない日は行かな……あー!」
唯斗は何かを思い出したのか、スリッパをペタペタ鳴らしながらいきなり廊下を走り出した。
「唯斗、廊下は走るな!」
すれ違った担任の横山に怒鳴られる始末。
「ごめん先生!後で話すから」
唯斗はクラブ棟へ走っていった。
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