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「年収五百万以上の三十代男性と婚活パーティー……」
金曜日の夜、近くのやや高級でおしゃれなイタリアンレストランで行われるとの事だった。
私は早速予約して、綺麗なワンピースを買った。
パーティーには、高収入の男性が十人くらいいた。彼らは皆学歴も良く、皆口を揃えて学のある女性がいいと言っていた。私は高卒であることを悟られないよう、難しい話を笑って聞いていた。
グラスを下げて新しい飲み物をとりにそっと部屋の角に行くと、白髪でスーツを着た男が立っていた。
「どうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
私はその人からお茶を受け取った。すると男の人は、そっと言った。
「私は、執事の黒崎と申します。もしよろしければ、私の主人様の結婚していただきたいのですが……」
黒崎と名乗った男は、髪を渡した。そこには婚前契約書とあった。
「契約結婚?」
「はい。わけは、来ていただければ分かるかと存じます」
「……契約するかどうかは、お宅に伺ってから決めるわ。だから、いつ伺えばいいかしら?」
「事前に電話だけくださればいつでもようございます」
「そう、わかったわ」
住所の載った地図を契約書と一緒に黒いファイルにしまうと、黒崎は私に差し出した。
「それでは、私は……」
「待って……学歴は、気にするお方かしら?」
私は、黒崎の背中にそっと聞いた。すると黒崎は笑って振り向くと、応えた。
「いえ、全く」
「そう……」
黒崎は一礼して会場を去った。私は一応、このパーティーが終わるまで会場にいた。
やっぱり中にいたのは難しい話ばかりをする、賢そうな男ばかりだった。
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