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「君に、どうして僕は指示したと思う?」
おじさんの問いかけに、わたしは首を横に振る。
「さあ、わからないわ」
本当にわからない。だって、おじさんがどうしてわたしに声をかけたのかすらわからないし、どうして承諾したのかもわからない。普段のわたしならポートレートモデルなんて意味不明なものを承諾するわけないから。警戒心丸出しで、シカトするのが普通だった。
何もかもよくわからないまま、わたし達は三年間もの時間を過ごしてきたのだな、と思うとまた不思議な気分になる。
「君に……どうもがいても取り返せない何かを見ているんだ」
「おじさんは、何が取り返せないの? 取り返したいものなの?」
「何が欲しいのか、はわからないし、僕はそもそもそんなもの持ってないのかもしれない。でも、君はいるも少女で、大人でもある。そんな君が僕にはとても美しく見える。そう思っていることが、奥さんに見透かされているのかもしれない。気持ち悪いもんな、自分の夫が年下の女性に入れ込んでるなんて」
入れ込んでいる、という言葉を聞いて、なぜか嬉しくなる。なぜだろうか。
「おじさんは、わたしが好きなの?」
「好きだよ。でも、恋愛感情じゃない。それは、はっきり言える」
「じゃあ、何?」
多少なりともわたしは、おじさんから【好意】を感じてきた。なのに勇気を出して聞いた質問をそんな風にはっきりと言われてしまうと、なんだかわたしがバカみたいではないだろうか。
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