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1つ、ため息をついて、おじさんは髪の毛をかきあげる。この時初めて、髪の内側はゴールドに染められているのだと知った。どれだけ一緒にいようと、どれだけ離れていようと相手を知ることは非常に大変なのだな、と感じる。この三年間でわたしはたくさんの時間をおじさんと過ごした。だけど、おじさんの名は知らないし、インナーカラーをしていることだって知らなかった。
わたしがおじさんのことで知っているのは、いつも爪に黒とか赤のマニキュアを施していることと色が白くて痩せていること。後、奥さんがいること。それだけだ。
「今までね、そんなに同じ被写体を撮り続けたことがないんだ。みんな、一度か二度でおしまい。別に僕もそれでよかった。同じ人を撮り続けるって、意外に難しいんだよ」
そうだろうか?とは思ったけれど、おじさんの表情を見ていると本当だと感じる。いつだって、おじさんはわたしに嘘をついたことがない。だから、いつだって、わたしは彼になら、写真を撮られていいと思っているのだ。服を着てようと裸だろうと。
「服装もさ。服を着たままでよかった。そのままの被写体を写すことが、自分の撮りたい写真だと思っていたから。記念に下着姿や裸の写真を撮ってほしいって言われた時は、まあ言われた通りに撮っていた。だけど、君は違うだろう」
言われてみれば、確かにわたしは一度も下着姿も裸も撮りたいと言ったことはない。
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