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第42話
「とにかく。パーティーの話が出たら、キアノ王子に伝えておいて」
「わかりましたわ。友人を招待したいと、そう伝えておきます」
「頼んだわ。それとね、向こうでツヴェル王子と会えたら貴女も交えて話がしたいのよ」
「私も?」
「ええ。魔術師を探すために仲間を増やしておいた方がいいし、私のことを彼にも話しておきたいの」
「お姉様のことを……それは、大丈夫なのでしょうか?」
「彼は信用出来るわ。大丈夫、何かあったらレベッカのことは私が守ってあげるもの」
そっと微笑むと、レベッカも少し安心したのか表情を緩めた。
私はともかく、レベッカからすれば他国の王子様と会うのはそんな容易いことではない。本来ならきちんとした手順を踏んでいかなきゃならないこと。
私の我儘に巻き込んでしまって、申し訳ないわね。
「ゴメンね、レベッカ。シャルを守るためとはいえ、貴女に色々と迷惑をかけて……」
「迷惑だなんて! 私だって、あの魔術師に惑わされてシャルロット様の身を危険に晒してしまいましたわ……本来なら投獄されてもおかしくはありません。だから、罪を償うためにも、そして馬鹿な私を止めてくださって、キアノ王子との仲を取り持ってくれたお姉様のためにも、私は力になりたいのです」
「レベッカ……」
真っ直ぐ、真剣な瞳で私を見てくれるレベッカ。
私はレベッカの手を取り、そっと握り締めた。
「ありがとう。貴女がそばにいてくれて本当に良かったわ」
「お姉様……」
「私一人じゃ限界もあったし、シャルを守りきれるか分からなかったけど……って、こんな風に言ったらノヴァが怒るかしら」
「そうですよ。聖獣を連れてる人なんて、きっとこの世界でお姉様だけですよ」
「そうかもしれないわね。あの子も他に仲間はいないって言ってたし、もしかしたら唯一の生き残りなのかしらね……」
「昔聞いたことがあるのですが、そういった聖なる生き物が少ないのは、この世界に満ちる魔力が減ったせいだとか」
「魔力が?」
レベッカが、頷いて話を続けた。
元々、魔力は空気のように世界中に満ちていた。
空から降り注ぐ雨の中にも、木々や花にも、あらゆるモノの中に魔力は宿っていた。
だが人間が増えたことで魔力は減っていった。人間が常に吸収し続けたせいで。
その内、魔力は人間が生まれ持った分しか得ることが出来ず、一日に使える限界が出来た。だから今は魔力量は生まれ持った才能ということになる。
「私はその才能にはあまり恵まれず、一日に使える魔力はほんの僅かです」
「まぁ、騎士とか特殊な職業でもない限り、日常生活で魔法を頼りにすることってそんなにないわよね」
「そうですね。でもお姉様は人払いのために魔法を常に作動させてますよね。ということは、かなりの魔力量をお持ちということになりますね」
「そうね。確かに一日中使ってても少し疲れる程度かしら。というか、私の魔法は魔力消費が少ないからなんだけどね」
コスパがいいおかげでシャルを覗き、じゃなくてこっそり警護できるってわけです。
でも、なるほど。それでノヴァは私の魔力を欲しがったのね。納得だわ。
「とりあえず、私の話はこれくらいよ。あとで鳩を飛ばすから、キアノ王子からパーティーの話があったら教えて」
「分かりましたわ」
それから普通にお茶を楽しんで、日が暮れる前に帰宅した。
明日からまたシャルの警護ね。
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