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第43話
それから数日。特に大きな動きもなく、私は毎日シャルの様子を見に来ている。
二日前にロッシュが自分の国に戻ったから、近いうちにパーティーが開催されると思う。あの国って王が許可すれば何でもやっちゃうハチャメチャなところなのよね。
リカリット国のパーティで、きっと何か起こると思う。
魔術師がシャルを殺すのを諦めて何もしてこない訳じゃないはずだわ。
ハドレー国やチェアドーラ国ほど、リカリット国は警備体制に力を入れていない。周囲が砂漠でそもそも余所者が訪れにくい場所にあるからだ。
とはいっても、王宮の周りは強者の兵士や傭兵で固めている。リカリット国の王様も確か元々傭兵だったはず。大出世ね。
「……ノヴァ。貴方も警戒しておいてね。向こうで何があるか分からないし」
「がう」
「ええ。私の指示を待たずに何か怪しい人がいたら捕まえちゃって」
「がうがう」
「そう。食べていいのは魔力だけ」
外はノヴァに任せればいいとして、あとは王宮での立ち回りね。さすがに内部の構造がどういう風になっているのか分からない。どこから敵が襲ってくるのか、どうやってシャルを守れるか。当日、シャルの護衛にどれくらいの兵士が付くのかしら。砂漠の中を大人数で超えるのは無理だと思うから、ハドレーからは数人。あとはキアノの方で何人か手配してくれるとは思うけど。
今回はキアノはシャルの護衛には回れないはず。だってレベッカもいるし、チェアドーラ国の王子として招かれるのだから挨拶回りもある。婚約者としてレベッカのことも紹介しなきゃいけないしね。
そうなると、早めにツヴェルと会っておきたいわ。何か不穏な音がしたら、彼ならすぐ気づけるはずだもの。
ツヴェルは毎朝街の中を散歩してるし、パーティーの前日にでもリカリットに入っておいて、話をしておいた方が良いかしら。さすがにレベッカはキアノと一緒に行くだろうから無理よね。
一応、聞くだけ聞いてみようかしら。
準備は万全にしておきたい。
だって今回のパーティーはシャルだけじゃなくて、恋100の主要人物が集まるのよ。これで何も起こらない訳ないじゃない。
ハッキリ言って、嫌な予感がずっとしてる。怖いもの知らずのベルの体が怖いと言ってる。
「……ベルにも怖いものがあったのね」
「がう?」
「そうよね。生きてるんだから怖いものの一つや二つあって当然よね」
私はこの体を過信しすぎてるのかしら。
だとしたら、この考えを改めないと。じゃないと足元をすくわれるわ。現に、それでベルはゲームで死んでいるんだから。
世界の全てが自分の物だと思い込み、全ての人を嘲笑ってきた。そして、一番馬鹿にしていたシャルに最後追い詰められる。
それじゃあ、何も守れない。
私の平穏な山暮らしだって、今後続けられなくなっちゃうじゃない。それだけは絶対に嫌だわ。
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