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第66話
「ナイト王子、魔術師に関してなにか分かることはないですか? 術士の目線で、犯人の予想とか……」
「そうだなぁ……計画性がない、ガキかな?」
「ガキ、ですか?」
「そんな感じ、しない?」
子供かどうかは分からないけど計画性がないのは確かね。
漠然とした目的しか持っていないのかしら。その目的を遂行するために我武者羅になってるとか。
「話でしか聞いてないから他には何とも言えないけど、僕から見たらそんな感じだね。なんて言うか……もうどうでもいい、みたいな?」
「自暴自棄にでもなってると?」
ツヴェルがそう聞くと、ナイトは小さく頷いた。
「君が見た夢というのも気になるね。消してしまった記憶を呼び覚ますことは出来ないけど……もしまた夢を見たら、そのまま何もせずに僕のところに来てほしいな。人の夢を暴く魔法なら、いくらでもあるんだ」
「え、ええ……そのときはお願いします……」
なんか怖いわね。もしまた夢を見ても彼に頼みたいと思えない。
でも、何となくだけどもう向こうから接触してくることはないんじゃないかって思うのよね。
夢のことは全然覚えてないけど、何故かそう思う自分が心の中にいる。ツヴェルが言った自暴自棄という言葉がしっくり来る感じ。
「……とりあえず、ハドレー国には僕も行くよ。向こうの攻撃の仕方を直接見てた方が色々と情報も増えるし、相手がどんな奴か気になるし」
「ナイト、顔が笑ってるぞ」
「そう? なんか面白いことになったなーって」
「楽しむんじゃない」
ツヴェルが呆れたようにため息を吐いた。
ナイト、魔法戦だとカッコよかったんだけどな。今は面倒な奴ってイメージしかないわ。
「まぁいいわ。それより、もっと魔法について詳しく知りたいのだけれど……」
「魔法を?」
「ええ。もっと詳しくならないと、対策が練れないし……重力攻撃もノヴァの力でゴリ押ししてどうにかなった、という感じだったから……」
「なるほどね。そういうことなら、良いだろう」
ナイトは部屋の中に散乱した本を拾い集め、それをテーブルの上にドンッと勢いよく置いた。
もしかして床に散らばっていた本、どこに何が置いてあるのか覚えていたの?
適当じゃなくてちゃんと選んでいたみたいだし、天才ってやっぱり変わり者が多いのね。
「それじゃあ、僕が知る限りの知識を君に教えてあげよう」
「え?」
「それじゃあまず、この本の五十七ページを見てくれる?」
「え、ちょっ……」
「まず魔法の歴史から始めよう。魔法というものが生まれたのは……」
それから数時間、私たちはナイト王子の有難い魔法講座を習うことになった。
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