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第75話
ツヴェルとの通信を切り、レベッカへ手紙を書き始めた。
心配は全くしていないけど、念のため私のことは話さないようにしてほしいということ。それから普通の女の子として接してほしいということ。それとなく気になっている人、仮面の男のことを聞いてほしい。
それから、出来ればロッシュの方がいいんじゃないかとシャルの気持ちを揺さぶってほしいと。ここが一番重要よ。
「それじゃあ、これをレベッカにお願い」
「了解しました」
魔法鳩に手紙を渡し、レベッカへと送った。
急に決まったことだから仕方ないけど、シャルと会う前にレベッカと話をしておきたかったわね。
「がう」
「ん? ああ、お菓子足りなかった?」
「がうがう」
「ええ、もう手紙送っちゃったわよ。手紙の返事が来たら、またレベッカに頼んであげるから待ってて」
全くこの子は毎日レベッカのお菓子をせがむんだから。レベッカだってそんな大量のお菓子焼くの大変なのよ。
今度なにかお礼をしないと駄目ね。まぁ貴族の子に材料費の心配なんかいらないとは思うけど、労働にはしっかりと見返りがないといけないのよ。私なんて何回サビ残したと思ってるの。あんな腹立たしい思いをレベッカにさせられないわよ。
「とりあえず家にあるお菓子で我慢してね」
「……がう」
「何よ。私の作ったものじゃ不満だって言うの?」
「がうがう」
「ワ、ワンパターン!? 同じものしか作れないって言うの!? 確かにパンとかプレーンのシフォンケーキとかクッキーしか作ってないかもしれないけど……山の中じゃ色々と限界があるのよ! 基本的に街で買い物とかしないし……」
そりゃあレベッカは毎回違うお菓子を持ってきてくれるわよ。そりゃもう女子力高めで見た目も可愛らしいわよ。
だからって飽きたはないでしょ、飽きたは。私なりに工夫はしてるつもりなのよ。
そんな話をしていたら、レベッカに送った鳩が戻ってきた。
魔法鳩はいつものように人間の姿になり、手紙を手渡してくれた。それから、大きな袋も一緒に。
「……レベッカったら、本当に気が利いてるわね」
「がう!」
ノヴァがお菓子の匂いに反応して尻尾をパタパタさせた。さすがねレベッカ。タイミング良すぎて私が女子力を発揮する暇もなかったわ。
「ほら、貴方にって。今日はパイを作ってくれたみたいね」
「がうがう」
「分かったって。すぐ準備するから待ってなさい。貴方も、いつもありがとう。籠に戻っていいわ」
「分かりました」
魔法鳩は元の姿に戻り、籠へ入っていった。
私はラッピングされたパイを皿に乗せて、地面に置いてあげた。いつもレベッカはケーキやパイのときは私が食べるように切り分けられたものと、ノヴァ用の大きめのホールを用意してくれる。
キアノは幸せね。未来のお嫁さんがこんなに気の利く良い子で。
「……貴方、甘いものばっかり食べてたら太るわよ」
「がう」
「私? 私は平気よ。毎日畑仕事とかやってるし」
「がうがう」
「嘘、重くなった!? そんな訳ないじゃない」
「がう」
「ふ、太ってないってば!」
ベルの体は絶対に太らないって変な自信があったから油断していたのかもしれないわ。明日からもっと体動かそうかしら。
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