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第84話
一通り話をすると、グランは興味なさげに一言だけ「ふーん」と呟いた。
「それで、俺はお姫様の護衛ってこと?」
「ええ。正直、他国の記念日に他国の王子様を護衛に使うのはどうかと思うけど……他の王子達からの許可は得ているので、グラン王子にもお願いできれば……」
改めて説明すると異例よね。
ゲームでは攻略対象は一人。それぞれのシナリオでここまで他のキャラが関わってくることはなかったから、ちょっと面白い。
なんて、いまそんなことを考えるのは不謹慎かしら。
「まぁ、いいけど。その魔術師ってそんなにヤバいの?」
「大規模な魔法で何度もシャルロット姫を襲っている。リカリットも奴の襲撃を受けて我が城を半壊させた」
「うわーお。噂には聞いてたけど、本当だったんだ」
「そんなものを街中で撃たれないように、グラン君にも協力してもらいたいんだ」
「そういうことなら、断る理由もないよ」
「グランはシャル姫の一番近くで守ってもらう。攻撃力、防御力、どれを取ってもお前が一番強い」
「うん、いいよ」
ナイトがストレートに褒めてる。ゲームでは各王子のパラメーターはどれを選んでも差が出ないようになっているけど、実際は違うのね。
色々と応用の利く力だもんね。私も彼がシャルの近くにいてくれたら安心だわ。
「そんで、変なお姉さんはどうするの?」
「私もなるべく近くにはいるつもり。何かあったとき、すぐ動けるように」
「ベル。また無茶をしないでくださいよ。あの時のように大怪我をしたら……」
「分かってるって。でも、状況次第では約束できないわよ」
もしシャルが死にそうになったら、きっとまた体が動く。誰かが守ってくれる、なんて他人任せにして見ているだけなんて無理よ。
それに魔術師には聞きたいこともあるし、黙ってられないわ。
「ねぇ、なんでそんなにシャル姫に執着してるの? 変なメイドさん」
「……そりゃあ、姫様はこの国にとって大事な人だから……」
「ふーん?」
「全ての問題が解決したら話してもいいわ。その時にまだ興味があればね」
「俺、いつでもお姉さんには興味津々なんだけどね」
「…………シャルロット姫は?」
「シャル姫? 可愛い人だけど、それが?」
「それだけ?」
「うん」
また攻略対象が一人減っちゃった。
私が先に出逢っちゃうと駄目なのかしら。これくらいの年頃の男の子は可愛いお姫様よりもちょっと変わったミステリアスな女の人の方が好きとか?
クラスメイトの女子より隣に住む女子大生のお姉さんに興味を持つみたいな、そんな感じかな。
まぁ、最終的にはシャルが自分を大事にしてくれる王子様を見つけてくれればそれでいいんだけど。ゲームやっていたせいか、他にも攻略キャラがいると同時攻略とか考えちゃうのよね。
今はその考えを捨てましょう。何股もかけるとかそんなのシャルのキャラじゃないし。
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