無辜之民・1

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 ――キーンコーンカーンコーン。  1時間目が始まったらしい。 「何で死んだの?」 「……喰われたらしい」 「喰われたって?」 「鬼、だよ」 「鬼ねぇ。最近多いねぇー」 「絶対に許せねぇ。今日、おはぎ作ったからくれるって言ってたんだ。楽しそうに」 「食い意地?」 「ちげーよ!」  遊李は、雅に噛み付いた。 「おばちゃん、毎日、楽しそうで。後ろめたさなんて何一つ無いような人だったんだ。罪のない人を喰うなんて、許せねぇよ!」  そうだねぇ、と雅は呟き、はて、と続けた。 「君は、その話をするだけのためにこの時間に来たの?」  雅はシビアだ。自分の興味があることにしか、話に乗ってこないし、それ以外には手厳しい。 「違う。オレは、その鬼をぶっ殺す。雅にも協力してほしいんだ」 「どうして?」 「……は?」 「ボクが協力しなきゃならない理由が理解(わか)らない。理由は?」 「人助け」 「パス。人を助けて、何の得があるの?」 「……もういい。オレ一人で探してやる」  乱暴に鞄を引っ掴んで、遊李は出て行った。  危ないのにねぇ、誰も聞いていない一言。
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