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「僕は一体。ああ、まず、僧正坊様に謝らないと。でも」
また、注意される。叱られる。それが無性に悲しかった。だって、今までこうやって自分を下にしていれば、何も考えずに済んだ。みんなどうしようもない奴と、それだけで終わらせてくれた。でも、今は違う。駄目だと言われてしまう。
花音だけじゃなく、僧正坊も。今のままでは駄目だと、そう言うのだ。それが解らなくなっていた。どうして駄目なんだろう。半妖は不安定な存在で危険なのだ。だったら、役小角が役立たずだとしたことは間違いではないじゃないか。
「ここで働きなさい。それが、いずれ己のためになる」
「――」
ふと耳奥に響いた声に、マメははっとなる。そして顔上げてきょろきょろとする。しかし、周囲には誰もいない。普段ならば賑やかにしている水棲の妖怪たちの姿もない。
「い、今のは」
どこか懐かしい声だった。そう思うと、ああ、あれは役小角の声ではないかと思い出す。最近では忙しく、マメの近くにやって来ない人。そんな役小角の顔を思い出し、マメはまた涙が出てくる。
「そうか」
そしてなぜ、傍に来なくなったのかを思い出す。
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