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昔はここにそれほど妖怪もおらず、マメは寂しかった。一人の時間が苦しかった。それでつい、結界の外に出ようとしたのだ。そして、首の呪いが反応し、のたうち回る羽目になった。
「全く、目を離すとすぐこれか」
そして苦しさを通り越し、もう無理だと意識を手放しそうになる頃、呆れた顔をしてやってくるのが役小角だった。ぱちんっと役小角が指を弾くと、苦しさは嘘のようになくなり、そして身体も楽になる。
「マメ。もうお前は人間の傍にはいられないんだ。一緒には生きられないんだよ」
それから、頭を撫でながら優しくそう言うのだ。もう一緒に生きられない。あの頃はそれが受け入れられず、そしてとても寂しかった。
「じゃあ、ご主人様とも一緒にはいられないのですか?」
「それはないが、俺にも仕事がある。ずっとは無理なんだ。大丈夫、そのうちここは賑やかになるよ。少しの辛抱だ」
「はい」
なぜ一人になったのか解らなかったけど、一緒に生きられなくなったからここにいるのは解っている。マメは頷くしかなかった。
人々の冷たく蔑む目だけが、マメの脳裏に強く焼き付いていたから、一緒にいては駄目なのだと解っている。
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