別の惑星から

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別の惑星から

トーマスが住む惑星から遠く離れた惑星が、環境破壊により生物が住めない惑星になりつつあり、資源の枯渇も進み、知的生命体同士での食料や資源の奪い合いが激しくなって惑星全体での戦争状態になっていた。 他の惑星へ脱出する計画をした国も多かったが、国民全員が他の惑星へ脱出するような計画が成功するわけがない。何万もの宇宙船を造る資源も足りないし、誰が脱出するかで揉めに揉めて内紛状態になり自滅する国も多かったのだ。 自暴自棄になった国々は大量の核兵器も使用して、地上は生物が住めないようになった。 日本のような島国のラーン国は王族関係者1000人が地下遺跡へと避難している。 その地下遺跡はラーン国の王族しか知らない秘密の地下遺跡で、どんな攻撃でも外からは破壊できないし勝手には侵入できないのだ。 王族たち1000人が地下遺跡へ避難してから半年が過ぎた。 「ロギンス司令官、食料の備蓄はあと1ヶ月ぶんよ。まだ、惑星間ゲートは使えないの?」 「申し訳ございません、女王様。毎日24時間、ゲートを始動させる方法を探していますが」 「地上はすでに生き物が住めない環境になっている。せっかく発見した惑星間ゲートが使えないと、この地下遺跡で死ぬのを待つだけです」 「それは……」 (そんな事を何回も言われなくても、こっちもみんなも必死でやってるんだよ!)と思う【惑星間ゲートを始動させようプロジェクト】責任者のロギンス司令官。 「ロ、ロギンス様!」 ロギンス司令官の部下が女王の間に駆け込んできた。 「おい! 女王様の御前だぞ!」 「す、すみません。し、しかし」 「よい。発言させなさい」と女王様。 「はっ。おい、何の用だ」 「はい。ロギンス司令官に申し上げます。惑星間ゲートが始動しました」 「何!? 本当か!?」 「本当です」 「そんな大事な事は早く言え!」 「……すみません」 (いや、だから、早く知らせようと走って来ただろ)と納得いかない部下。 「ロギンス、惑星間ゲートへ行きますよ」 「はっ。女王様」 惑星間ゲート室へと行く女王たち。惑星間ゲートはたまたま発見されたのだが、その始動方法が分からなかったのだ。 「で、始動の方法は?」 ゲート近くにいた担当者に質問した女王。 「はっ。恐れながら発言いたします。女王様」 「許す」 「片目を閉じて右足だけでケンケンをします」 「それだけ?」 「いえ。その後で左に3回、回ってワン。右に3回、回ってニャン。トーゲケラヒと言えば始動しました」 「……それ、よく分かったわね」 「ありがとうございます」 「で、そのゲートは本当に惑星間瞬間移動ができるの?」 「試してみます」 「誰が」 「それは、司令官に」 「ロギンス、誰が試すの?」 「地下遺跡に避難している1000人から抽選でもれなく1人」 「それ、私も抽選するつもり?」 「恐れながら女王様も抽選に参加なさりますか?」 「なさらないわよ」 「分かりました。男たちの中から選びます」 「そうして」 「はっ」 そうして、抽選で選ばれた男が惑星間瞬間移動ゲートを試すことになったのだ。 「女王様、行ってまいります」 「死んでも私を恨まないでね」 「もちろんです。死んだら、司令官に化けて出てやります」 「そうして」 「あの、無事に生還した際のご褒美は?」 「そうね……私の娘と結婚を許す」 「ありがとうございます!」 「でも、それなりの成果は必要よ」 「はっ」 1人がやっと通れるゲートの穴に入っていく男。 (生きて帰ってきたら王女様と結婚させてもらえる。頑張れ、俺) 男は惑星間瞬間移動をした。 ・・・・・ 男がゲートを進み穴から出ると、地面があって周りには木々の緑が見えた。そして、勝手にゲートは閉まる。 【片目を閉じて右足だけでケンケン。その後で左に3回、回ってワン。右に3回、回ってニャン。トーゲケラヒと言えばゲートは開く】 その紙を大事そうに見る男。 (この紙を無くしてゲートを開く方法を忘れたら俺は帰れないからな) 厳重にカバンの中へしまった。カバンの中や服のポケットには何枚も同じメモが入っているのだが。 (どうやら、惑星間瞬間移動には成功したようだ。それも、俺たちが住める環境のようだな) スーハースーハーと深呼吸する男。 「空気が美味い。さて、偵察をするか」 カバンから双眼鏡を出して遠くを見る男。 「お、建築物や動物が見える。二本足で歩いて服を着ているな。そこそこの知的生命体らしい」 別の惑星から瞬間移動した男は、トーマスが住む王都の近くにいる。王都の近くの山に惑星間ゲートは接続したのだ。 「ガアッ!」 「ん?」 男が振り向くと何かの動物が襲ってきた。 「ふん」 ガゴッ! ズズン その攻撃を軽く避けて動物を殴り倒した男。 その動物は立ち上がると3メートルの大熊なのだが、男の身長はそれよりも大きくて、身長は4メートルはある。 「知的生命体ではないようだ。美味いのか?」 大熊の毛皮を手でバリバリと剥いでから生で食べる男。 「うん。まあまあだな。あの二本足で歩く知的生命体は美味いかな」 男には、トーマスたち人間は食料にしか見えてない。 (まあ、今回は視察任務だ。あの知的生命体を食べるのは今度にしておくか) 双眼鏡を見ながら偵察を続ける男だった。
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