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茉里サイド
机の上に置かれた名刺が一枚。
どの方向から覗き見ても、輪郭一つ思い出せない。
「本当にホント?」
「なんで私が嘘つかなきゃいけないのよ」
「とは言っても、記憶のある限りイケメンなんていなかったし……」
「まー。珍しく酔いつぶれたからねー。」
そう。むしろ武史がいつ迎えに来たのかさへ分からない。気がつけばちゃんとベットの中で眠っていたし、部屋の中に武史の姿も無かった。あったのは、テーブルの上に置かれた名刺だけ。
起きてすぐ、頬を触る。柔らかく化粧が落とされて、化粧水と乳液までつけられた肌に、武史の後始末を確信して、ベットにダイブした。
それから、約5時間後。武史からおはようのメールを見ると、即座に電話のcallボタンを押した。
「んー。嫌。無理だわ。どんなイケメンでも……嫌。イケメンだからこそ、『すいません。記憶が全くございませんが、こんにちわ。』とか絶対言えない。」
「はぁ?向こうは茉里ちゃんが潰れてたのもちゃんと知ってるから、大丈夫だって!」
「大丈夫じゃない!!なんか変!!武史が普通に私にイケメン進めて来る所から怪しい。だってそんないい男、武史がほっとくわけないじゃん。」
「どーゆう意味よ!失礼な。友だちのご馳走まで手を付けるほど、こっちは飢えてないわよ!」
そんな言い争いをしながら。
「とにかく、今日はそっちの好きな店でいいから、集合しよーよ。」
と本音を強請る。
「私の貴重な時間をなんで2日も割かないといけないのよ。却下よ。却下!」
「やだ。お願い!こんなの消化不良で、仕事なんか手につかなくなっちゃうよ。」
「あら。いいじゃない。振ったくせにジメジメ愚痴をこぼすより、新しい出会いに悶々とした方が何百倍も建設的よ。」
耳元でブツンと途切れる電子音に「あーーー。」と叫び声を上げながら、二度目のベットにダイブした。
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