1人が本棚に入れています
本棚に追加
時は流れて
その日から、ふたりはそれぞれ学校帰り、仕事帰りにわたげ集めにいそしみました。花の少ないこの町では骨の折れることでしたが、春の終わりにはおみごと、プランター一面がわたげで埋まりました。
「リオンの地道な活動のたまものだね」
「ダンさんも集めてくれた。ありがとう」
「今、ふーってしなくて、本当にいいの?」
「ええ、来年がいいの」
首を傾げるダンさんを尻目に、リオンはいつものまじめな顔で、じょうろではなくコップでプランターに水を注ぎました。
その時です。
「けなげなもんじゃないか、ダンさん。この小さいお人、リオンはな、自分はわたげが好きだけど、あんたはたんぽぽのほうが好きだと知っているんだ。だから来年の春まで待って、たんぽぽ畑を見せてやりたいのさ」
最初のコメントを投稿しよう!