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来年も、再来年も、かもしれない
リオンもダンさんも、目を丸くして固まってしまいました。わたげでふわふわになったプランターから声がした――と思ったら、プランターが四本の足で立ち上がり、くるんと巻いた二本の角が生えたのです。
「わたげをこんなに植えられたのは初めてでな。羊になっちまったよ」
「プランター羊さん、どうしてダンさんに言っちゃったの。秘密だったのに」
リオンは手で顔を覆いました。ダンさんは、気にするのはそこ? と思いましたが、プランター羊が「しかし聞いてほしい」と話し始めたので、静かにしました。
「このままではプランターがぎゅうぎゅうで、わたげが成長できない。半分にしてくれ」
「ああ! ならリオンの出番だよ、ほら」
ダンさんに背中をポンポンされて、リオンは手を顔から外しました。その顔はいつも通りまじめでしたが、ほっぺはりんご色でした。
かがんで、プランターに向かって、ふーっ。
プランターの半分、実にたんぽぽ五十本ぶんのわたげが大空へ旅立っていきました。
リオンはニコニコ、わたげたちを見送りました。本当はやっぱり、すぐにでもふーっとしたかったのです。リオンの隣にかがんで、ダンさんも笑いました。
「リオン。ダンさんのことまで考えてくれてありがとう。来年、楽しみだね」
「世話をさぼったら脱走するから、頼むぞ」
「大丈夫。リオンたち、ちゃんとやるもの」
そして、今年の春。リオンとダンさんのアパートのベランダでは、たんぽぽをいっぱいに咲かせたプランターが、昼寝をしています。かれがまた羊になる日は、もうすぐです。
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