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「歌が上手になる魔法」
あまねちゃんは、思わず笑ってしまいました。
確かにおばあちゃんは、歌が上手ではありません。むしろ、音痴です。そしてそれは、だれもが知っていることでした。
「あまねちゃんが生まれたときにね、子守唄を歌ってあげられなかったの。だから魔法が使えたら、まっさきに自分にかけちゃうわ。上手に歌える魔法をね」
おばあちゃんはそう言ってあまねちゃんの髪をなでると、小さな声で歌い始めました。調子のはずれた、へたっぴな歌でした。
静かに広がる不思議な歌を聞きながら、あまねちゃんは、ゆっくりと、眠りにおちていったのでした。
大人になったあまねちゃんは、ある日、今はもう亡くなってしまったおばあちゃんの夢を見ました。
おばあちゃんは、見たことのない紫色の服を着て、そっと歌を歌っていました。優しい響きのその歌は、あの日と同じ、いつまでも聞いていたくなる魔法みたいな歌声でした。
(へたっぴなのにぁ……)
あまねちゃんは、思わず笑ってしまいました。そして、おばあちゃんに言いました。
「やっぱり、おばあちゃんは魔法使いだね」
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