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「そ……そうだったんだ、二人とも僕を助けてくれたのにごめん。
魔王によって邪悪化された人間はもとに戻れないことはわかっていたのについ昔を思い出しちゃって」
「いいんですのよ、私だってカケルの気持ちはよくわかりますわ」
そう言った麗華の目がキラリと光った。
彼女は涙ぐんでいた。
彼女も愛するものを魔王に邪悪化された経験がある一人だった。
「僕だってカケルの気持ちはわかる!!」
ニャロッペもそう叫ぶ。
彼もきっと悲しい思い出の持ち主なのだろう。
***
「カケル、魔王に邪悪化されたものは死ぬと毒ガスに変わりますのよ。早く離れないと危険ですわ」
麗華が華奢な指をカケルの手に絡めると、引っ張ろうとする。
「お願いだ。ちょっとだけ。ちょっとだけだから少し待って」
そう言って、カケルは地面に横たわったマサルの横で身を低くした。
「兄さん! 兄さんは別人になってしまった。
だけど僕は兄さんと過ごした日々を忘れない。
今はもう兄さんは魔王から自由になったのだから、どうか安らかに眠って」
カケルはマサルの瞼に優しく指先を当てると、兄の目を閉じさせた。
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