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ここまではしみじみとした表情だったカケルだったが、にわかに顔をクシャクシャクシャにさせ、兄にすがりつく。
「なぜ!? なぜなんだ兄さん!?
どうして僕達は敵同士になってしまったんだ!!
僕達はあのころはいつでも一緒だったのに!」
鼻水をしたたらせながら兄をゆすりつづけるカケルに麗華は
「カケル、早く行きませんと死体が毒ガス化してしまいますわ!!」
「そうだよ、カケル早く行こうよ!」
とニャロッペ。
麗華とニャロッペがカケルの手を引っ張ろうとすると、カケルは二人を振り払う。
「離せ! 僕はずっと兄さんとここにいるんだ!!!」
カケルは麗華とニャロッペにマサルから引き剥がされると、そのまま二人に両腕を抱きかかえられて引きずられていく。
「離せーッ! 離せーッ! 兄さーんっ!! 兄さーんっ!!」
どこまでも高い秋の空を、カケルの若々しい声が響き渡る。
マサル、かつてのモブ敵たちは、遠のく意識の中で、ほんのりと口角を上げた。
彼は今まで何度も死んできたが、今回が本当の意味での死だ。
個性を持ったキャラとして死んだ彼は、もうモブ敵だったときのように、生き返ることはできない。
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