元老院たちの午後

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元老院たちの午後

一  「元老院各位は、まず、この属性魔法に関する資料に、目を通して頂きたい」  属性魔法が及ぼす被害はもはや深刻なものだった。強力な属性魔法が放たれる影で、市街地の復興や経済のたてなおしを図るのに叩き出された被害総額は国庫金では賄いきれないレベルに達し、犠牲となったものたちの数もばかに出来ず、人手不足が続いていた。 これまで幾度も議論してきたが、この問題は一度も根幹的な決着がつかないまま、今に至る。けれどもう、それも終わりにすべきだろう。 マクシスは、ため息混じりに深いため息をつくと、資料の説明を始める。  「結論から言おう、属性魔法はこの世界には不要だ。刷新するべきだと私は思う」  「それは、魔術師たちが研究と開発してきた魔法に対する否定。そう受け取って宜しいか?」  「そうなると、魔術師ギルドにしてきた経済的支援を断つばかりか、ギルドも全面廃止にもっていくということですか?」  「魔法の研究と開発を、違法行為及び犯罪として定めるつもりか? マクシスよ、お前は、魔女狩りがしたいのか?」  「落ち着いて聞いて欲しい。各属性魔法を最大まで極めたものが、モンスターと戦うと、炎属性で大規模な火災が発生し、水属性で町の一角が水没する。地属性で地盤沈下が起こり町という町の家屋が倒壊していることはこれまでも報告は上がっている」  「絵空事を抜かすな!」マクシスより年上の元老院デレクが立ち上がり、反論する。  「強大なモンスターを屠るには、強力な魔法や武器が必要なことはわかっているだろうが。その為の犠牲は致し方のないことだ」  「一体のモンスターを葬るのに、人類は何千何万と死者を出さなければならないことのほうが、私にとっては絵空事だ」  「貴様とは意見が釣り合わんな」  「それは私の台詞だ、デレク!」
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