変顔

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 梅雨の長雨の降り頻る日の入りの凡そ半刻前。大学受験の勉強に勤しむ高校三年である彼は、昼夜問わず開館から閉館まで点滅を繰り返す橙の灯りのせいか、薄暗い図書館にて受験勉強をしていた。薄暗い図書館には彼と司書を勤める老婦以外誰もいない。彼は何故、自宅ではなく図書館に来ているのかと疑問に持つ者も多いだろう。彼はこの質問にこう答える。一つ目は、誰もいない空間である事だ。やはり勉学をするに置いて空間は大事なものだ。そして二つ目は、彼自身が本が好きだからである。その説明は言うまでもない。何故ならそれは今の彼の状態にある。数学の問題集がおよそ三十頁が終わり、鮮やかな赤色のボールペンインクにて丸がつけられている。そんな問題集の上に、芥川の蜘蛛の糸、地獄変が広げてあった。何故このような本を読んでいるのかというと、彼自身、ライトノベルよりか文学の方を好むためである。なぜ文学を好むか?それは、読書自体、彼の歴史好きという趣味にて、丁度近代文学を知り、また読んでみたいと思ったからだ。
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