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「みんなから聞いたよ。みんな、お前にいいように使われ、捨てられた事を後悔して、お前を憎んでいる。」既に、彼は押し黙り何も出来なくなっていた。
「もう、君の「変顔」は「仮面」になってしまったよ。最初は只の変顔だったのかもしれないが、それは固まり、既に綺麗に取れなくなってしまった。」彼の仮面は、ひび割れ彼の顔を抉るように取れてしまっていた。
「もうここにいる必要はない。」水野はそう告げ、闇夜に消えていった。
「ハハッハハハ……」
彼は膝から崩れ落ちた。変顔と云う武器は潰れ、最後の希望である水野にも見捨てられた。その疲れた体を慰めるように淡い光を放つ月は遂にその姿を見なかった。
雨はまだ降っている。彼の顔についた深い傷に雨水を染み込ませながら。
(令和三年 秋十月)
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