変顔

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 日入り果てた後、残り一時間で図書館が閉館という時間まで差し掛かったころ、彼は持っていた本を机の隅に乱雑に本が置かれている山に置く。彼は常に文学の棚に向かうのだが、今回は何故か、心理学の棚に向かったのだ。色々な本の並ぶ中、何故かよくテレビで見るメンタリストの笑顔の写真と共に「必見!」や「これでみんなも友達ができる!」等の吹き出しが書かれていた。その時、その本の何かに惹きつけられるように彼は手を取った。「人に好かれる」というタイトルらしい。この本を手に取るや否や彼は自席へ戻り、本を開き始めた。数頁を読んだところで彼は急いで乱雑に置かれた本を戻しに行き、そして素早く撤収した。  何故彼がこんな本を読むのか。それは無論、彼は友達が欲しい為である。自らの家庭環境という縛りから解き放たれ、自由気ままに生きていきたいのである。
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